近藤状態による電子散乱過程の解明

近藤効果とは

通常、金属の抵抗値は、温度を下げていくとともに減少していきます。しかし、1930年代頃から、微量の磁性不純物が金属内に存在するだけで、低温になると逆に抵抗が上昇するという奇妙な現象が起きることが知られていました。1964年、日本の近藤淳博士が、この現象が電子のスピンが関わる多体効果によることを明らかにしました。今日では「近藤効果(Kondo effect)」と呼ばれるこの現象は、電子のスピンが主要な役割を果たす最も典型的な量子多体効果の一つであり、以後半世紀にわたって数多くの理論的・実験的研究がなされています。
近藤効果について、発見者ご自身の解説がこちらにあります。

近藤状態による電子散乱

私たちは、半導体を微細加工することによって、大きさが数100nm程度の領域に数十個の電子を閉じ込めた「人工原子」を作製しました。その人工原子中に単一スピンを作り出し、近藤効果を引き起こすことに成功しました。さらに、高精度の電流揺らぎ測定を行い、近藤状態によって電子が散乱される様子を調べました。その結果、一つの電子が打ち込まれると、人工原子から複数の電子が散乱されてくるという二粒子散乱過程の検出に成功しました。これは、近藤効果によって形成された量子多体状態に特有の散乱現象です。

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半導体基板上の人工原子と測定系の概念図。

このような研究は、固体素子上の人工原子に電子を衝突させることによって量子多体状態の内部構造を探るという「衝突実験」であり、近藤効果の研究に新手法をもたらすものです。

→ 論文はこちら:Yamauchi et al., Phys. Rev. Lett. 106, 176601 (2011)